もつれない患者との会話術
ポイント
保証金に関する具体的な条文が民法になく,その定義については専門家の意見が分かれるところですが,医療機関の保証金は診療契約における患者の義務の1つである診療費の支払いに対する担保と言えます。
基本的には入院手続きの際,支払い方法を含む入院から退院までの流れをしっかり説明し,患者の理解を得ることが大切です。保証金を退院時会計の中で精算している医療機関であれば,その旨を事前に説明しておくことで,このケースのようなトラブルは発生しないと考えます。
解説
保証金額ならびに精算方法は各医療機関で設定できますが,診療契約と一体をなすものであり,契約違反となるような金額の設定は許されません。また,入院前に高額な保証金を要求すれば,応招義務違反とも受け止められかねません。法的に対応しようとすれば,民法第90条(公序良俗違反)及び医師法第19条第1項(応招義務等)に照らし合わせて常識的な範囲で金額を設定することになります。
医療機関の対応
最近は,保証金なしで入院可能という医療機関も増えてきましたが,依然として保証金を入院時に求める医療機関は多いと言えます。保証金は,万一のときの未収金防止策ですが,保証金の用意が困難な患者が入院治療を受けられないという事態を生じさせないよう配慮する必要があります。
関係法令など
- 厚生労働省保険局医療課長・厚生労働省保険局歯科医療管理官通知「療養の給付と直接関係ないサービス等の取り扱いについて」(平成17年9月1日保医発第0901002号.最終改正:平成20年9月30日保医発第093007号)
「預かり金」の取り扱い
入院時や松葉杖等の貸与の際に事前に患者から預託される金銭(いわゆる「預かり金」)については,その取扱いが明確になっていなかったところであるが,将来的に発生することが予想される債権を適正に管理する観点から,保険医療機関が患者から「預かり金」を求める場合にあっては,当該保険医療機関は,患者側への十分な情報提供,同意の確認や内容,金額,精算方法等の明示などの適正な手続きを確保すること。
公の秩序又は善良な風俗に反する事項を目的とする法律行為は,無効とする。
診療に従事する医師は,診察治療の求があつた場合には,正当な事由がなければ,これを拒んではならない。