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アフィニトール

結節性硬化症(TSC)

「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください。

「結節性硬化症」の効能又は効果について

結節性硬化症又は孤発性リンパ脈管筋腫症に伴う腎血管筋脂肪腫対象第Ⅲ相国際共同比較検証試験(EXIST-2 試験)、結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫対象第Ⅲ相海外比較検証試験(EXIST-1試験)、結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫対象第Ⅱ相海外臨床試験(C2485 試験)に加え、結節性硬化症に伴うてんかん部分発作対象第Ⅲ相国際共同比較検証試験(EXIST-3 試験)、及び結節性硬化症に伴うリンパ脈管筋腫症又は孤発性リンパ脈管筋腫症対象第Ⅱa 相海外臨床試験(X2201 試験)の結果に基づき、本剤の効能又は効果を「結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫」及び「結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫」から「結節性硬化症」に一部変更することが承認されました。なお、EXIST-1 試験、EXIST-3 試験、X2201試験は承認用法用量ではなく、また、EXIST-2試験及びX2201 試験は承認外の孤発性リンパ脈管筋腫症患者を含む臨床試験です。

結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫対象第Ⅱ相海外臨床試験(C2485 試験)1)2)3)<海外データ>

1)社内資料: 海外臨床試験の結果 C2485 試験(承認時評価資料)〔20190282〕

2)Krueger, D. A. et al. : N. Engl. J. Med. 363(19), 1801, 2010〔20110130〕

COI:本研究はノバルティスがスポンサーとなり実施しました。ノバルティス社員が著者に1名含まれています。ノバルティスより謝礼金、コンサルタント料、研究助成を受領している著者が含まれています。

3)Franz, D. N. et al. : Ann. Neurol. 78(6), 929, 2015〔20190293〕

COI:本研究はノバルティスがスポンサーとなり実施しました。ノバルティス社員が著者に4名含まれています。ノバルティスより謝礼金、コンサルタント料、研究助成を受領している著者が含まれています。

試験方法

試験デザイン: 単施設、非盲検、医師主導臨床試験
実施地域:米国

結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫対象第Ⅱ相海外臨床試験(C2485 試験)
目的 アフィニトールの安全性を評価する。
対象 結節性硬化症と診断され、画像検査で上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)病変の増大が確認された患者28例
方法 アフィニトールは、3.0mg/m2/ 日(連日又は隔日投与)を開始用量として経口投与し、トラフ濃度5〜15ng/mLを目標に、忍容性を確認しながら1日用量で25%ずつ増量した。各被験者は、毎日同じ時刻にアフィニトールの必要錠数を服用した。
評価項目 主要評価項目: SEGA 病変の体積変化(6ヵ月時点の最大SEGA 病変体積のベースラインからの変化)、安全性
副次評価項目: 顔面血管線維腫に対する奏効、てんかん発作頻度、QOL評価、神経心理学的評価
解析計画 最大SEGA 病変体積のベースラインからの変化について、片側Wilcoxon signed rank 検定(有意水準2.5%)により比較した。主要評価項目の解析にはLOCF 法を用いた。主要評価項目の補助的解析として最大SEGA 病変の30%以上の縮小及び50%以上の縮小が認められた患者数を評価時点ごとに示した。また、ベースラインからの最大SEGA 病変体積の最良変化率をWaterfall plot に示した。てんかん発作頻度はベースライン時及びアフィニトール投与6ヵ月後のてんかん発作の頻度を、24 時間ビデオ脳波測定を用いて評価した。すべての測定値は24 時間あたりの数値に標準化し、sign testを用いて解析した。介護者の報告によるてんかん発作の頻度の推移も評価した。顔面血管線維腫に対する奏効は医師判断に基づいて評価された。QOL 評価はQOLCE の16のサブスケールスコアは、サブスケールごとに平均をとり、QOL 総スコアは個々のサブスケールのスコアを足して16で割った値とした。QOL 総スコアと16のサブスケールの記述統計を時点ごとに評価した。神経心理学的評価はベースラインと6ヵ月後に、神経心理学者が年齢に応じた神経心理学的検査を用いてアフィニトールの神経心理及び認知機能への作用を評価した。

患者背景(海外データ)

患者背景ごとのアフィニトール投与の表
患者背景ごとのアフィニトール投与の表
患者背景ごとのアフィニトール投与の表

* 皮質結節と放射状大脳白質神経細胞移動線を同時に認める場合は主要特性1つと考える。LAMと腎AMLを同時に認める場合は結節性硬化症と診断するには他の特性を認める必要がある。

(コア期終了時解析:2009年12月カットオフ、最大の解析対象集団)

SEGAの特性

SEGAの特性ごとのアフィニトール投与の表

SEGA/てんかんに対する前治療

SEGA/てんかんに対する前治療ごとのアフィニトール投与の表

(2010年12月カットオフ、最大の解析対象集団)

有効性

1)SEGA の体積変化(中央画像判定)(主要評価項目)

最大SEGA 病変の体積の中央値[範囲]は、ベースライン時点(n=28)で1.74cm3[0.49 - 14.23]、6ヵ月時点(n=27)で0.93cm3[0.31 - 7.98]であり、主要評価項目である6ヵ月時点の最大SEGA 病変体積のベースラインからの変化は、中央値で0.80cm3[0.06 - 6.25]の有意な縮小であることが認められました(片側Wilcoxon signed rank 検定p <0.001)。
また、60ヵ月時点(n=23)において、最大SEGA病変の体積は中央値1.17cm3[0.21 - 4.39]であり、ベースラインからの変化は中央値で0.50cm3[−0.74 - 9.84]の縮小が認められました。最良総合効果で、30% 以上の体積縮小を認めた被験者の割合は92.9%(26/28 例)、50% 以上の体積縮小を認めた被験者の割合は82.1%(23/28例)でした。

SEGA病変の体積変化

SEGA病変の体積変化(海外データ)のグラフ
SEGA病変の体積変化(海外データ)のグラフ

SEGA病変の最良変化率

SEGA病変の最良変化率(海外データ)のグラフ
SEGA病変の最良変化率(海外データ)のグラフ
2)てんかん発作の頻度(副次評価項目)

試験登録前6ヵ月以内に1回以上のてんかん発作が認められビデオ脳波検査結果が利用可能であった16例において、アフィニトール投与後6ヵ月時点で9例(56.3%)はてんかん発作の頻度が減少し、6例(37.5%)は変化がなく、1 例(6.3%)は増加が認められました。
〈介護者の報告に基づくてんかん発作の頻度〉
介護者の報告による発作頻度の評価(患者の前回来院時からの発作頻度を介護者が記録し、その結果を治験担当医師が介護者に質問することにより実施)では、ベースライン時に日常的にてんかん発作を認める患者の割合が26.9%(7/26 例)であったのに対し、6ヵ月時点では8.0%(2/25 例)、60ヵ月時点では11.1%(2/18例)に減少しました。

3)顔面血管線維腫に対する影響(副次評価項目)

ベースライン時に顔面血管線維腫が認められた被験者は25例でした。6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、24ヵ月及び30ヵ月時点で変化が認められた患者は、それぞれ13/15例(86.7%)、8/14例(57.1%)、7/9例(77.8%)、8/9例(88.9%)及び11/12例(91.7%)でした。当初の計画では、顔面血管線維腫は同じ医師が一貫して評価し、かつベースライン時と比較することとしていましたが、実際には同じ医師が評価していない場合があり、またデジタル写真が毎回撮影されたわけではなかったことから、結果の解釈には注意を要します。

(3 年フォローアップ解析時のデータ:2011年12月カットオフ)

4)参考情報:QOL 評価(副次評価項目)

quality of life in children with epilepsy(QOLCE)[Sabaz et al. 2003]を用いてQOLを評価しました。FAS におけるQOL 総スコアの平均±標準偏差は、ベースライン時が58.04±14.34、3ヵ月後が63.76±12.70、6ヵ月後が62.37±14.47でした。

5)神経心理学的評価(副次評価項目)

年齢に応じた神経心理学的検査を用い、アフィニトールの認知機能等への影響を評価しました。評価対象集団24例において、行動改善の傾向は認められましたが少数例の検討のため統計学的な考察は困難でした。また、その他、精神・知能や神経心理学的な評価においてベースラインと比べ変化は認められませんでした。

安全性

・ 主な副作用
アフィニトールを投与した28 例中、副作用は28 例(100.0%)にみられました。主な副作用は、上気道感染症26例(92.9%)、口内炎25例(89.3%)、副鼻腔炎15例(53.6%)、口腔内潰瘍形成14例(50.0%)、蜂巣炎及び胃腸炎各12 例(42.9%)、中耳炎11 例(39.3%)、鼻咽頭炎9 例(32.1%)、咽頭炎、ざ瘡、発熱及び結膜炎各8例(28.6%)、外耳炎及びざ瘡様皮膚炎各7例(25.0%)、肺炎、皮膚感染、尿路感染及び下痢各6 例(21.4%)、体部白癬、せつ、胃感染及び高トリグリセリド血症各5 例(17.9%)、血中コレステロール増加、血中トリグリセリド増加、咳嗽及び蛋白尿各4 例(14.3%)、耳感染、好中球数減少及び鼻漏各3 例(10.7%)等でした。
・ 重篤な有害事象
重篤な有害事象は28 例中9 例(32.1%)にみられました。内訳は四肢膿瘍、蜂巣炎及び痙攣が各2 例(7.1%)、ウイルス性気管支炎、胃腸炎、肺炎、副鼻腔炎、白血球増加症、てんかんにおける原因不明の突然死、腰椎穿刺後症候群、四肢痛及び点状出血が各1例(3.6%)でした。重篤な副作用は、四肢膿瘍及び蜂巣炎各2例(7.1%)、ウイルス性気管支炎、肺炎、副鼻腔炎及び白血球増加症各1例(3.6%)でした。
・ 投与中止に至った有害事象
本試験では投与中止に至った有害事象は認められませんでした。
・ 死亡
1 例(3.6%)がてんかんにおける原因不明の突然死により死亡しましたが、アフィニトールとの関連は否定されました。

(2014 年1月カットオフ)

アフィニトール錠2.5mg・5mg【用法及び用量】(抜粋)(結節性硬化症の場合)
成人の結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の場合 通常、エベロリムスとして1日1回10mgを経口投与する。なお、患者の状態やトラフ濃度により適宜増減する。
上記以外の場合 通常、エベロリムスとして3.0mg/m2を1日1回経口投与する。なお、患者の状態やトラフ濃度により適宜増減する。
アフィニトール分散錠2mg・3mg【用法及び用量】
成人の結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の場合 通常、エベロリムスとして10mgを1日1回、用時、水に分散して経口投与する。なお、患者の状態やトラフ濃度により適宜増減する。
上記以外の場合 通常、エベロリムスとして3.0mg/m2を1日1回、用時、水に分散して経口投与する。なお、患者の状態やトラフ濃度により適宜増減する。