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症例報告 137 [主訴:頭頂部の腫瘤]

<症例> 29歳、女性
<主訴> 頭頂部の腫瘤
<家族歴> 特記すべきことなし
<既往歴> 糖尿病
(症例提供) 福井大学医学部 皮膚科学講座 助教 飯野 志郎 先生
(監修) 福井大学医学部 皮膚科学講座 教授 長谷川 稔 先生

解答と解説

A1.診断名

Psuedocyst of the scalp (PCS)

A2.鑑別診断

臨床像や画像所見からは鑑別として表皮嚢腫、アポクリン汗嚢腫などの皮膚に発生する嚢腫を考える。また、感染症の否定のため、内容液と組織の培養検査や切除標本の特殊染色(PAS染色、グロコット染色、グラム染色、チールニールセン染色)を行う。自験例では培養検査は行っていないが、上記の特殊染色はすべて陰性であった。

A3.検査、原因、治療

PCSは青壮年の頭頂部に好発する、脱毛を伴った単発性の偽嚢腫性病変である。深部毛嚢炎を契機として発生した炎症性の肉芽組織が、治癒する過程で生じるとされる。臨床的には、概ね頭頂部に出現する紅色小丘疹から始まり、初期に圧痛など炎症所見がみられるものもある。腫瘤は漸次ドーム状を呈して拡大し、波動をふれ、時に血性、大部分は黄色透明な粘調な液の排出をみる。脱毛は腫瘤増大とともに始まり、通常脱毛部分に一致して黄褐色のドーム状腫瘤が完成する。完成された腫瘤は大部分単発で無自覚、大きさは拇指頭大ぐらいまでで、穿刺排液により一時的に縮小するも再び液が貯留し、腫瘤形成をみることが多い。病理組織学的には、表皮嚢腫のように皮膚との連続はなく、深部に存在し、明らかな壁構造を有しない偽嚢腫であり(写真3)、内空隙にはリンパ球、形質細胞、好中球などの炎症性細胞浸潤や出血巣(写真4)、あるいは毛嚢破壊によって生じたと思われる少量の表皮成分がみられる(写真5)。治療は切除が基本であるが、穿刺排液後のステロイド局注が有効であったとする報告もある。

写真3

症例写真3

写真4

症例写真4

写真5

症例写真5

皮膚科領域

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