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症例報告 138 [主訴:人工肛門近傍の紅色結節]

<症例> 71歳、男性
<主訴> 人工肛門近傍の紅色結節
<家族歴> 特記すべきことなし
<既往歴> 16年前、消化器外科において、潰瘍性大腸炎に対する大腸亜全摘、人工肛門増設を施行されている
(症例提供) 福井大学医学部 皮膚科学講座 助教 飯野 志郎 先生
(監修) 福井大学医学部 皮膚科学講座 教授 長谷川 稔 先生

解答と解説

A1.診断名

転移性皮膚癌(大腸癌の皮膚転移)

A2.鑑別診断

表面が平滑であることから、皮下から発生した皮膚軟部腫瘍や皮膚付属器腫瘍、リンパ腫などが鑑別として考えられる。潰瘍性大腸炎の既往があることから、初期の壊疽性膿皮症も考えるかもしれないが、本症例は弾性硬であり、軟らかい膿瘍を示唆する所見はないことから鑑別可能である。

A3.検査、原因、治療

本症例は結節部から生検を行った。病理組織学的には皮下に多数の印鑑細胞の浸潤がみられた(写真2)。その後、消化器外科で大腸癌が発見され、PETで多発肺転移も確認された。以上から、最終的に本症例を大腸癌の皮膚転移と診断した。
内蔵悪性腫瘍の皮膚転移が全ての転移の中で占める割合は10%未満といわれ、その数は決して多くはない。しかし、本症例のように皮膚転移を契機に原発の内蔵悪性腫瘍が発見されることもあり、注意を要する。臨床像は結節型、炎症型(丹毒・蜂窩織炎様)、硬化型(鎧状)など、多彩である。結節状のものは硬く、潰瘍化がみられることも多い。診断のためには生検を行うが、転移性皮膚癌の病理組織像は皮膚科医にとって見慣れないものであることも多く、確定診断に際しては、病理医との十分なディスカッションや原発巣の検索が必要である。原発巣の組織があれば、両者の対比なども有用である。
内臓悪性腫瘍の皮膚転移に対する根治的治療は、原発巣の癌種に応じた全身治療であり、皮膚科医単独での治療は、いかなる治療も根治的治療とはならないことを理解しなければならない。転移性皮膚癌に対する皮膚科医の治療のスタンスは、基本的に緩和治療であるため、治療を行う際は必ず原発巣を治療する主治医や患者本人と話し合いの上、共通の認識の下に治療のゴールを定める必要がある。それに応じて、疼痛を和らげるための外科的治療や、出血や悪臭のコントロールのための外用療法、といった治療の選択を行う。また、転移性皮膚癌に対する直接的な治療をしない場合でも、皮膚の病巣を適切に評価・記録して、主治医に連絡することも我々皮膚科医の大切な役割である。本症例では消化器外科によって大腸癌に対しての分子標的薬による全身治療が行われ、その3ヶ月後に結節はほぼ消退した(写真3)。

写真2

症例写真2

写真3

症例写真3

皮膚科領域

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