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症例報告 165 [主訴: 手指の多発性小結節]

<症例> 65歳、男性
<主訴> 右肩および頭部の皮膚腫瘤
<既往歴> 虫垂炎、白内障
<家族歴> 特記すべきことなし
(症例提供) 獨協医科大学 皮膚科 准教授 濱﨑 洋一郎 先生
(監修) 獨協医科大学 皮膚科 教授 井川 健 先生

解答と解説

診断名

  • 多中心性細網組織球症 (multicentric reticulohistiocytosis)

鑑別診断

  • 皮膚の結節と関節炎を生じる疾患として、リウマチ結節、サルコイド−シス、痛風結節が鑑別に挙げられる。皮膚生検の病理組織学的所見が鑑別に有用である。

検査、原因、治療法

  • 診断のため左手指結節より生検した。表皮内および表皮直下から真皮深層まで、すりガラス状の豊富な好酸性細胞質を有する大型の組織球様単核細胞と多核巨細胞の集塊状の密な浸潤を認めた(図2,3)。これらの細胞は、免疫染色でCD68陽性(図4)、CD1a、S-100陰性であった。以上の病理組織所見と臨床所見より多中心性細網組織球症と診断した。合併症の精査を行ったところ、上部消化管内視鏡検査で胃癌を認めた。

    多中心性細網組織球症は、手指や顔面(耳、鼻周囲)に好発する多発性小結節と、破壊性の多発関節炎を特徴とする非Langerhans細胞組織球症である。爪郭に小結節が並ぶ所見を“coral beads”と称する。口腔内や鼻粘膜に病変をみることもある。リンパ節、筋肉、心臓などにも病変を形成するが、臨床症状を起こすことはまれとされる。診断は、病理組織学的にすりガラス状の豊富な好酸性細胞質を有する組織球様単核細胞、多核巨細胞の集塊状の密な浸潤を確認することが必要となる。約2割にリンパ腫のような造血器腫瘍や肺癌、胃癌、乳癌、卵巣癌などの内臓悪性腫瘍を伴い、また、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患を合併するため、それらの精査が重要となる。悪性腫瘍の合併は予後を左右する。


    図2
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    図3
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    図4
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皮膚科領域

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