皮膚所見クイズ
症例報告 167 [主訴: 首・腋窩・鼠径部・腹部の丘疹]
<症例> | 25歳、女性 |
---|---|
<主訴> | 首・腋窩・鼠径部・腹部の丘疹 |
<既往歴> | 特記すべきことなし |
<家族歴> | 特記すべきことなし |
(症例提供) | 公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 皮膚科 医員 山上 優奈 先生 |
---|---|
(監修) | 公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 皮膚科 主任部長 吉川 義顕 先生 |
解答と解説
診断名
- 弾性線維性仮性黄色腫 (pseudoxanthoma elasticum:PXE)
鑑別診断
- 類似の皮膚症状を呈する疾患として PXE-like papillary dermal elastolysisや D-penicillamine 内服、皮膚が弛緩する疾患として皮膚弛緩症やエーラス・ダンロス症候群などが挙げられる。
検査、原因、治療法
- 特徴的な皮疹と分布よりPXEを疑い、診断確定のため腋窩の丘疹より皮膚生検を実施した。
病理組織学的には、真皮の弾性線維に変性を認め、Von Kossa染色にて同部位に石灰沈着を認めた(図2-a、b、c)。
眼科診察では両眼ともに網膜色素線条の所見を認めたが、循環器科診察では特に異常は指摘されなかった。
以上の所見よりPXEと診断した。
PXEは弾性線維の変性・石灰化をきたす常染色体劣性遺伝疾患で、ATP binding cassette (ABC) の一種であるABCC6遺伝子異常により発症する。
頚部や腋窩、関節屈曲部などに対称性に黄色調を帯びた丘疹が集簇して特徴的な敷石状の局面を形成し、これを特にcobblestone appearanceと呼んでいる。皮膚はやわらかくたるみ、加齢とともに皺が著しくなる。
また、網膜と脈絡膜との間に存在するBruch膜は弾性線維に富んでおり、この部位の変性と石灰化により網膜色素線条を形成する。成人期の患者のおよそ85%にみられる所見である。
また、動脈の弾性板に変性と石灰化が生じると、間欠性跛行、高血圧、狭心症発作、心筋梗塞、消化管出血などもおこしうる。
未だ本疾患に対する根本的治療はないが、皮膚病変に関しては整容的観点から切除されることがある。
眼病変、血管病変に対しては早期の予防的対応が重要であり、他科との連携が重要となってくる。
参考文献:
1) あたらしい皮膚科学
2) 弾性線維性仮性黄色腫診断基準 2012 (日皮会誌:122(9), 2303-2304, 2012)