疾患について
気管支喘息のタイプ
アレルギー性ぜんそくとは
監修:国立病院機構相模原病院 臨床研究センター長 谷口 正実 先生
国立病院機構相模原病院 臨床研究センター 診断・治療薬開発研究室長 福冨 友馬 先生
「アレルギー性ぜんそく」って?
「アレルギー性ぜんそく」であるかどうかを知っておくことが大切
ぜんそくは、「気道の炎症」により、気道が狭くなる病気です。ぜんそくには、アレルギー反応によって気道の炎症が起こる「アレルギー性(アトピー型)ぜんそく」と、アレルギー以外の原因で起こる「非アレルギー性(非アトピー型)ぜんそく」の2つのタイプがあり、ぜんそく患者さんの約6割がアレルギー性ぜんそくであるといわれています。
では、あなたのぜんそくが、「アレルギー性ぜんそく」かどうか、ご存知ですか?
実は、ぜんそくのタイプによって、ぜんそく症状をコントロールする方法も変わります。そのため、ご自身のぜんそくが「アレルギー性」かどうかを知っておくことが重要なのです。
当ページでは、「アレルギー性ぜんそく」について、くわしく説明しています。
ぜんそく症状を上手にコントロールしていくためにも、ぜひ知識を深めていただきたいと思います。
そもそも、アレルギーってなに?
アレルギーとは、害のない物質(アレルゲン)に対する免疫の過剰反応
私たちの体には、ウイルスや細菌など害のある異物が入ってきたときに、それらを攻撃するしくみがあります。それが免疫です。ウイルスや細菌が体内に侵入すると、リンパ球が活性化し、異物を攻撃する武器となる「抗体」という物質がつくられます。
アレルギーとは、この免疫が、ダニやハウスダスト、花粉などの本来は害のない物質に対して過剰に反応してしまう状態です。アレルギー反応を引き起こす物質をアレルゲン(抗原)といいます。害のないアレルゲンを攻撃するために、抗体をどんどん放出してしまうことで、アレルギーの症状が起こるのです。
害のないアレルゲンに対してアレルギー反応が起こります
「IgE抗体」が、アレルギー性の炎症を引き起こします
「抗体」には、さまざまな種類がありますが、なかでもアレルギー反応を起こす重要な役割があるといわれるのが、「IgE(アイジーイー)抗体」です。
アレルゲンが体内で感知されると(❶)、「Bリンパ球」という免疫細胞でIgE抗体がつくられます(❷)。アレルゲンとIgE抗体が免疫細胞の一種であるマスト細胞に結合すると、「ヒスタミン」や「ロイコトリエン」などの化学物質が放出され、これらが炎症を起こします(❸)。
また、アレルギーには、「好酸球」という別の免疫細胞を介して、サイトカインという物質を放出して炎症を起こす、別のしくみもあります(❹)。
アレルゲンとIgE抗体がアレルギー性の炎症を引き起こします
アレルギー性ぜんそくのしくみって?
気道にアレルギー性の炎症が起こると、ぜんそく症状があらわれます
アレルゲンとIgE抗体によって、体内のさまざまな場所でアレルギー性の炎症が起こります。
アレルギー性の炎症が起こる場所によって、「アレルギー性鼻炎」、「アトピー性皮ふ炎」など、さまざまなアレルギーの病気が生じます。
気道でアレルギー性の炎症が起こることで引き起こされるのが、アレルギー性ぜんそくです。
アレルギーによる炎症はぜんそく以外の病気も引き起こします
アレルギー性の炎症はぜんそくの原因のひとつです
ぜんそくの原因である気道の炎症には、アレルギーだけでなく、汚染物質(タバコの煙や排気ガス)なども関連しています。
アレルギー性の炎症が原因で起こるぜんそくがアレルギー性ぜんそく、そのほかの炎症が原因のぜんそくが非アレルギー性ぜんそくです。
「アレルギー性ぜんそく」と「非アレルギー性ぜんそく」は炎症の原因により分類されます
アレルギー性の病気がひとつあると、
他のアレルギー性の病気にもなりやすい?
アレルギー性の病気のなかでも、「ぜんそく」「アレルギー性鼻炎」「アトピー性皮ふ炎」は、複数のアレルギーを発症しやすいことが明らかになっています。
なかでも関連性が強いのはぜんそくとアレルギー性鼻炎で、ぜんそく患者さんのなかでアレルギー性鼻炎を合併している方の割合は約50~80%、アレルギー性鼻炎患者さんのなかでぜんそくを合併している方の割合は約20~40%といわれています。
アレルゲンの種類
アレルギー性ぜんそくを起こすアレルゲンにはどのようなものがあるの?
「環境アレルゲン」は気道の炎症に強く関連しています
代表的な「環境アレルゲン」には、下記のようなものがあります。
環境アレルゲンの種類
ダ ニ 代表的なアレルゲンです。ハウスダストのなかに、ダニの死がいやふんが含まれています。 |
ペット ネコやイヌの毛が代表的。空気中に浮遊しやすいアレルゲンです。ウサギやハムスターでアレルギー症状を起こす方もいます。 |
昆 虫 ガ、ゴキブリなどが代表的です。体、脱皮殻、ふんなどがハウスダストのなかに含まれています。 |
カビ(真菌) ハウスダストにも含まれ、空気中にもただよっています。感染症の原因にもなります。 |
花 粉 時期によって量が異なる、「季節性」のアレルゲンです。住んでいる地域によっても受ける影響は異なります。 |
環境アレルゲンと季節との関係
環境アレルゲンには、「通年性」のものと「季節性」のものがあります。
「通年性」の代表的な環境アレルゲンは、ダニやペットなど。ダニは夏から秋にかけて少し増加しますが、冬でも死がいなどがアレルゲンとなって飛散しています。
「季節性」の代表的な環境アレルゲンは、なんといっても花粉です。春先のスギ・ヒノキが有名ですが、夏から秋に花粉が飛散するイネ科やキク科の植物もあります。
通年性 | ダニ、ハウスダスト、ペット、昆虫など | |||
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季節性 | 春 | スギ・ヒノキ | 秋 | ブタクサ |
ハンノキ(もしくはシラカンバなどカバノキ科花粉) | ヨモギ(キク科) | |||
初夏〜秋 | カモガヤ(もしくはオオアワガエリなどイネ科花粉) |