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バーチャルde骨髄線維化の鑑別

WHO分類2016 改訂のポイント

監修:名古屋第一赤十字病院 病理部 副院長・部長 伊藤 雅文 先生

WHO分類2016年改訂では、骨髄増殖性腫瘍(MPN)は分類上の大幅な見直しはないが、診断基準や遺伝子異常に新たな知見が組み込まれた1)。ポイントを以下にまとめる。

分類上の変更点表1

  1. 肥満細胞症がMPNのグループから外れ、独立した。
  2. 原発性骨髄線維症(Primary myelofibrosis: PMF)が、前線維化期(prefibrotic/early stage)と、線維化期(overt fibrotic stage)に分けられた。

BCR-ABL1 陰性MPNの診断基準変更点表2表3表4

  1. JAK2、 MPL変異に加えCALR変異が診断基準に加えられた。
  2. 原発性骨髄線維症(PMF)に加え、真性多血症(PV)、本態性血小板血症(ET)の骨髄生検所見が診断基準大項目に追加された。
  3. PVの診断基準が男性;ヘモグロビン(Hb)>18.5g/dLよりHb>16.5g/dL、女性;Hb>16.5g/dLよりHb>16.0g/dLに引き下げられた。
  4. 慢性好中球性白血病(CNL)の診断基準にCSF3R T618Iあるいは他のCSF3R変異が取り入れられた。

骨髄線維化のグレード分類の変更点表5

  1. 線維化のグレードは、膠原線維と骨硬化に修正が加えられた。
  2. 線維化の密度の評価は、皮質骨周囲以外の造血領域に限り評価することと明記された。
  3. MF-2/3の膠原線維評価にトリクローム染色の推奨が追加された。

今回の改訂では、MPN診断において新たに見出された疾患特異性の高い遺伝子異常が取り入れられたことと、骨髄病理診断の重要性が強く打ち出された点がポイントである。

1) Arber DA, Orazi A, Hasserjian R et al. The 2016 revision to the World Health Organization classification of myeloid neoplasms and acute leukemia. Blood 2016; 127: 2391-2405. 

表1 WHO分類2016年改訂
Myeloproliferative neoplasma (MPN)
骨髄増殖性腫瘍
Chronic myeloid leukemia (CML), BCR-ABL1+
BCR-ABL1陽性慢性骨髄性白血病
Chronic neutrophilic leukemia (CNL)
慢性好中球性白血病
Polycythemia vera (PV)
真性多血症
Primary myelofibrosis (PMF)
原発性骨髄線維症
  • Primary myelofibrosis, prefibrotic/early stage
  • 原発性骨髄線維症前線維化期
  • Primary myelofibrosis, overt fibrotic stage
  • 原発性骨髄線維症線維化期
Essential thrombocythemia (ET)
本態性血小板血症
Chronic eosinophilic leukemia, not otherwise specified (NOS)
慢性好酸球性白血病-非特定型
MPN, unclassifiable
分類不能骨髄増殖性腫瘍
Mastocytosis
肥満細胞症
Myeloid/lymphoid neoplasma with eosinophilia and rearrangement of PDGFRA, PDGFRB, or FGFR1, or with PCM1-JAK2
PDGFRA、PDGFRB、またはFGFR1遺伝子異常、あるいはPCM1-JAK2を有し、好酸球増加を伴う骨髄系/リンパ系腫瘍
Myeloid/lymphoid neoplasma with PDGFA rearrangement
Myeloid/lymphoid neoplasma with PDGFB rearrangement
Myeloid/lymphoid neoplasma with FGFR1 rearrangement
Provisional entity: Myeloid/lymphoid neoplasma with PCM1-JAK2
Myelodysplastic/myeloproliferative neoplasma (MDS/MPN)
骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍
Chronic myelomonocytic leukemia (CMML)
慢性骨髄単球性白血病
Atypical chronic myeloid leukemia (aCML), BCR-ABL1-
BCR-ABL1陰性非定型慢性骨髄性白血病
Juvenile myelomonocytic leukemia (JMML)
若年性骨髄単球性白血病
MDS/MPN with ring sideroblasts and thrombocytosis (MDS/MPN-RS-T)
血小板増多と環状鉄芽球を伴う骨髄異形性/骨髄増殖性腫瘍
MDS/MPN, unclassifiable
分類不能骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍

*WHO分類2008年より変更となった箇所

表2 真性多血症(PV)診断基準
診断基準 大項目3つすべて
大項目①、②+小項目
大項目

① 男性:Hb>16.5g/dL 女性:Hb>16.0g/dL
or 男性:Ht>49% 女性:Ht>48%
or 赤血球量(Red cell mass)が平均正常予測値の25%超

②骨髄生検で3系統の増加、多形成熟巨核球
JAK2 V617FあるいはJAK2 exon 12変異
小項目 血清エリスロポエチン低値

注:大項目②の骨髄生検は、持続する赤血球増加(男性:Hb>18.5g/dL or Ht>55.5%、女性:Hb>16.5g/dL or Ht>49.5%)を認め、大項目③と小項目を満たす場合は必須ではない。ただし、初期の骨髄線維化(約20%の症例で認められる)は、骨髄生検でのみ検出可能で、線維化の所見により、二次性骨髄線維症へのより早期の進行が予測可能である。

表3 本態性血小板血症(ET)診断基準
診断基準 大項目4つすべて
大項目①、②、③+小項目
大項目 ①血小板数>45万/μL
  • -骨髄生検でおもに巨核球系細胞 (過分葉核を持つ大型成熟巨核球を伴う)の増加を認める。
  • -好中球の左方偏位や増加、赤芽球系細胞の増加は認めない。
  • -細網線維の軽度の増加(MF-1)は極めてまれである。
BCR-ABL陽性CML、PV、PMF、MDSや他の骨髄性腫瘍のWHO基準を満たさない。
JAK2、CALR、MPLのいずれかの遺伝子変異を認める。
小項目 クローナルマーカーの存在、あるいは反応性血小板増多症を示す所見がない。
表4 原発性骨髄線維症(PMF)診断基準
  Prefibrotic/early PMF Overt PMF
診断基準 大項目3つすべて+小項目1つ以上 大項目3つすべて+小項目1つ以上
大項目
  • -巨核球の増加と異型
  • -MF-2以上の細網線維の増生を認めない
  • -年齢に比して骨髄細胞密度の増加
  • -顆粒球系細胞の増加
  • -しばしば赤芽球系細胞の減少
  • -巨核球の増加と異型
  • -MF-2以上の細網線維、膠原線維の増生を認める

BCR-ABL陽性CML、PV、ET、MDSや他の骨髄性腫瘍のWHO基準を満たさない。

② ET、PV、BCR-ABL陽性CML、MDSや他の骨髄性腫瘍のWHO基準を満たさない。

JAK2、CALR、MPLのいずれかの遺伝子変異
or他のクローナルマーカーあり
or反応性の骨髄線維化が否定できる

JAK2、CALR、MPLのいずれかの遺伝子変異
or他のクローナルマーカーあり
or反応性の骨髄線維化が否定できる

小項目
  • 合併症によらない貧血
  • 白血球数≧1.1万/μL
  • 触知可能な脾腫
  • 血清LDH上昇
  • 合併症によらない貧血
  • 白血球数≧1.1万/μL
  • 触知可能な脾腫
  • 血清LDH上昇
  • 白赤芽球症

注:JAK2、CALR、MPLいずれの遺伝子変異も認めない場合には、他の頻度の高い遺伝子変異(ASXL1、EZH2、TET2、IDH1/IDH2、SRSF2、SF3B1)の検索が診断の助けとなる。

注:反応性(二次性)の軽度細網線維増加(MF-1)を生じる病態としては、感染症、自己免疫疾患、慢性炎症、ヘアリー細胞白血病や他のリンパ系腫瘍、癌の転移、中毒による骨髄障害が挙げられる。

表5 骨髄線維化のグレード分類
MF-0 細網線維は散在性にあるが、交差像は見られない。正常骨髄に相当。
MF-1 主として血管周囲に、細網線維は多くの交差像を伴い、粗いネットワークを形成する。
MF-2 細網線維が高度な交差像を伴いびまん性かつ高密度に増生し、限局性に膠原線維の束状増生および/または巣状の骨硬化所見を認める。
MF-3 細網線維が高度な交差像を伴いびまん性かつ高密度に増生し、膠原線維の密な線維束形成を認め、通常骨硬化所見を伴う。

膠原線維と骨硬化について軽微な修正が加えられた。

線維密度は造血領域に限り評価される。

MF-2/3の評価にはトリクローム染色の追加が推奨される。

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